作曲家やミュージシャンなどがよく使う、プロ仕様のモニターイヤホン。
近年は音楽鑑賞用としても人気が出ています。
ただ、普通の音楽鑑賞用イヤホンと異なる特徴を持っていたり、音楽鑑賞用イヤホンより選び方が難しかったりして、とっつきにくいですよね。単純に価格帯が高いモデルが多いですし、失敗したときのショックも大きいです。
そこで今回は、モニターイヤホンを選ぶときに大事なポイントとおすすめモニターイヤホンをそれぞれ5つ紹介します。
目次
そもそもモニターイヤホンとは?
まずは、モニターイヤホンが気になっているけどあまり知らないという人のために、モニターイヤホンとは何者なのかについて説明します。既に知っている人は、ここは読み飛ばしても大丈夫ですよ。
モニターイヤホンは、主に作曲家・オーディオエンジニア、ミュージシャンが使います。曲の仕上がりを確認するためだったり、演奏家が自分の演奏している音を聞くためだったりですね。
そういうプロ用途のものです。音をモニタリングするということで、モニターイヤホンと言われています。
女性「へえ、モニターが付いてるのかと思ってた」
あや
一般的な音楽鑑賞用のイヤホンは、低音を強くするなど何らかの味付けをしていることが多いです。そして、そんな味付けも含めて楽しむという側面があります。
一方モニターイヤホンは、正確な音を確認するためのものです。正確な音を鳴らしてくれる、余計な味付けがないものが好まれます。実際、そういったフラットな音を鳴らすモデルが多いです。
音の情報量も一般的なイヤホンと比べると多い傾向があります。
もちろん、音の特性・情報量・密度などに関しては、モデルにより異なりますが。
全体的に音がフラットで再現性が高いので、そういうサウンドを好む人には音楽鑑賞用としても人気が出てきています。
また、演奏用と楽曲制作用とでモデル選びが異なるのもモニターイヤホンの特徴です。
演奏用には、返し性能が求められます。返しというのは、自分が今出している音を聞くことです。これができることはもちろん、その際の聞き取りやすさなどが問われます。
一定間隔で鳴り続けるクリックという音が出ること、そしてその聞き取りやすさも求められるポイントです。
あとは、演奏をする際にクリックと伴奏を同時に流すときの聞きやすさも問われます。
楽曲制作用は、各楽曲の位置感覚、音量がしっかり把握できないといけません。一つ一つの音の帯域がしっかり聞き分けられることが、強く求められます。
よしぞー
さて、ここまでの内容を踏まえて、今度は選ぶときのポイントを見ていこう
モニターイヤホンを選ぶときに重要なポイント
モニターイヤホン選びは、音楽鑑賞用のイヤホンと少し勝手が異なります。ここがモニターイヤホンの敷居を高くしている要因です。そこで、モニターイヤホンを選ぶときにどこを重視するべきか、わかりやすく解説します。
どんな用途か
モニターイヤホンは、使用用途によって選ぶべき商品が変わります。
制作などの業務用で使うならバランスの良い音質よりも、細い音を鮮明に聞き分けられることを重視したほうが良いでしょう。
ただただ音楽を楽しみたいだけなら、心地よくバランスの良い音を出すもののほうがおすすめです。
業務用でも、作曲・DTMとステージ用とでは違ってきます。
前述のように、作曲・DTM用なら音の定位、音量バランス、クリアな音質が重要です。さらに、余計な味付けがない原音に近い音を出す再現性の高いモデルであることもポイントになります。
ステージ用は音の返し、クリック音、バックトラッキングが重要です。それらの性能が高く、周囲の音に惑わされにくいような遮音性の高いモデルを探しましょう。
ドライバーユニットの種類
イヤホンには、ドライバーユニットというものが搭載されています。わかりやすく言えば、音を出す部分です。
これには、主に三種類あります。
ダイナミック型
1つ目は、ダイナミック型です。
これは最も多く出回っていて、安価なモデルが多いので目にする機会も多いでしょう。音の信号を振動板に伝えて音を出すという、最もイメージしやすいタイプです。
特徴的なのは、音のレンジが広いこと。音のレン時というのは、再生周波数の範囲です。価格.comなどでイヤホンのスペックを見ると、必ず書いてあります。
これが広いとどうなるのかというと、低音をよく出せるようになるんです。そのため、ダイナミック型は音に迫力があります。
ただ、レンジが広い分、他のタイプに比べると音の解像度が低くなるんです。
音の解像度は、密度とも言いかえられます。原音をより細かく再現している音を、解像度が高い音と表現するんです。
密度として考えると、レンジが広いと解像度が低くなる理屈がわかりやすくなります。
たとえば、狭い場所に100人集めると人口密度が高くなりますよね。自ずと人たちが一所に集まるため、一人ひとりの顔も見えやすくなります。
逆にかなり広い場所に100人集めると、人口密度は低くなりますよね。自然と人が散らばったりして、一人ひとりの顔は見えにくくなるでしょう。
つまり、密度が高い方がより多くの情報が得られるということね
あや
バランスアーマチュア型
2つ目は、バランスアーマチュア型です。
これは、比較的高価格のモニターイヤホンで採用される傾向があります。アーマチュアという超小さい鉄板に電流を流して、振動させることで音を出す方式です。
高音と中音域が得意という特徴があります。
音のレンジは狭いですが、音の解像度が高く繊細に音を聞き分けることが可能です。
よしぞー
作曲とかDTMだと、こっちのほうが有利だね
ハイブリッド型
3つめは、ハイブリッド型です。
これは、ここまで紹介した2つのタイプをどちらも搭載したユニットになります。ダイナミック型の低音域の強さ・迫力と、バランスアーマチュア型の繊細さの両方を備えており、音に欠点がありません。
唯一欠点があるとすれば、価格帯がとても高くなることです。
予算が豊富ならハイブリッド型一択かも
あや
よしぞー
すごく大勢の諭吉さんが飛ぶけどね…
カナル型かインナーイヤー型か
モニターイヤホンには、カナル型とインナーイヤー型の二種類があります。
カナル型は、イヤーピースを耳に挿して使うタイプですね。耳栓のように使うので、密閉状態で音を楽しむことができます。環境音が邪魔になりにくく、高音質を楽しみやすいので人気です。
モニターイヤホンとしては、遮音性を高めることで自分の音が聞きやすかったり、より正確に音の仕上がりを確認できたりといった側面もあります。
インナーイヤー型は、耳に引っ掛けて装着するタイプです。
ずっと思ってたけど、インナーイヤーのほうが耳に挿しそうな名前でややこしいよね
あや
インナーイヤー型の特徴は、耳への圧迫感が少なく装着感が良いので、疲れにくくなるということ。長時間使用するのに向いているので、雑音のないところで作業する人はインナーイヤー型を選ぶこともあります。
よしぞー
どっちも一長一短ということだね
イヤーピースの素材
こだわりたい人は、イヤーピースの素材もチェックしておくと良いですよ。
イヤーピースは耳に直接触れるところなので、素材感がとても重要です。シリコン製が一般的ですが、他にもウレタンやトリプルフランジ型などがあります。
ウレタンは装着性が高いのが魅力で、トリプルフランジ型は遮音性が高いのが魅力です。
自分の耳にあったものを選びましょう。
一応、純正品にこだわらなければ交換用は色々売っています。
よしぞー
ただ、なるべくなら純正品で済ましたいところだね
サイズが無ければ仕方がないけどね
あや
機能性
イヤホンには、さまざまな機能が搭載されることがあります。
たとえば防水機能です。防水機能があれば、水仕事や外出中でも使いやすくなります。作業中にしか使わないなら不要です。
他にもハイレゾに対応しているかどうか、音質調整はできるかどうかなどなど…。機能はメーカーごとの特色が出る部分でもあるので、挙げるとキリがありません。
自分の用途や好みに合う機能が搭載されているかどうかも、じっくり見てみましょう。
よしぞー
モデル選びの楽しい部分でもあるし、注目したい!
おすすめモニターイヤホン5選
ここまで、モニターイヤホンを選ぶときのポイントを5つ紹介してきました。これだけ色々チェックしていれば、もう選び方に困ることはないでしょう。そこで最後に、実際におすすめなモニターイヤホンを5つ紹介します!
ゼンハイザー IE 100 PRO
- 駆動方式:ダイナミック型
- ドライバサイズ:10mm
- タイプ:カナル型
- インピーダンス:20Ω
- 再生周波数帯域:20Hz~18kHz
- 減衰:26dB
- 感度:115dB(1kHz/1Vrms)
- 重量:19g
IE100 PROは、ゼンハイザーのモニターイヤホンの中ではエントリーモデルです。1万円台で手に入るので、モニターイヤホンがどのようなものかを試すにはちょうど良いでしょう。
目立った機能などは無く、純粋な性能と音で勝負しています。質実剛健なイヤホンで、まさに業務仕様といったところでしょうか。
ダイナミックドライバーを搭載していることもあってか、ゼンハイザーの「低音の再現性の高さ」と「抜け感の良さ」がしっかり感じられます。音はかなり繊細に聞き取れ、それぞれの音に輪郭があるような印象です。
フラットな音が好きな人、ゼンハイザーの音が気になる人には間違いなくおすすめできますよ。
また、別売りまたはセットパッケージになっているBluetoothコネクターを使うことで、ワイヤレス化もできます。完全ワイヤレスではないものの、無線で使えるだけでなく通話機能やコントロール機能も使えるようになるので有線は気に入らないという人にもおすすめです。
ゼンハイザー IE 400 PRO
- 駆動方式:ダイナミック型
- ドライバサイズ:7mm
- タイプ:カナル型
- インピーダンス:16Ω
- 再生周波数帯域:6Hz~19kHz
- 減衰:123dB
- 重量:18g
100PROと比べると再生周波数帯域が広くなっています。よりレンジが広く、幅広い音をしっかりと出すことが可能です。
400PROに搭載されているのは、新開発されたダイナミック7mmワイドバンドトランスデューサというもの。これにより、迫力のある高解像度の音を実現しているとのことです。
さらに、TrueResponseドライバーシステムを搭載。どの音域でも等しく歪みのない音を出してくれるため、聴いていてストレスがありません。
形も人間工学に基づいており、高い装着快適性とフィット感があります。イヤーピースの形も最適化され、シリコンフォームのチップは柔軟で、カナル型としては疲れにくいです。長時間使う際にも適しています。
実際の音は、クリアの一言です。音の輪郭がそこまで強くはないため、聞き疲れがありません。それでいて個々の音をしっかり聞き取れます。輪郭を強調しすぎるよりも、音を全体的にクリアにすることで単純に聞きやすくしているのでしょう。
細い音までしっかり忠実に聞けるので、音楽鑑賞に使えばこれまで聞き取れなかったような音に気づけるので、新たな発見ができます。
反面、これはモニターイヤホン全体の特徴でもあるものの、地味という意見もあるんです。
リスニング用にも十分使える作業用、といったところでしょう。
音質は、100PROより明らかに良いです。
価格帯も跳ね上がるので当たり前ではありますが…。低音が少し強めに感じるものの、中高域もしっかりとしています。ボーカル入りの曲を聞くと、声がとても艶かしくクリアに聞こえるんです。しっかりとベースラインに支えられ、ボーカルが牽引し、ギターが雰囲気を作っているということがよくわかります。
SHURE SE215 Special Edition
- 駆動方式:ダイナミック型
- タイプ:カナル型
- インピーダンス:20Ω
- 再生周波数帯域:21Hz~17.5kHz
- 減衰:107dB
現在販売されているSE215スペシャルエディションモデルは、独自チューニングを施されています。低域をより強化しており、スタンダード・エディションより迫力のある音が楽しめるんです。
カラーもトランスルーセントブルーとホワイトとなっています。
トランスルーセントブルーは、簡単に言えばスケルトンカラーです。
よしぞー
なぜ人はスケルトンに惹かれてしまうのか…
そういうとこあるよね
あや
形は人間工学に基づいた薄型で、ノズル角度が最適化されています。長時間使っても案外快適です。フィット感もあり、遮音性も高い印象があります。さらに、周囲の騒音を最大37dB遮断してくれるので、作業用でもあらゆる場所で楽しむ音楽鑑賞用としてもとても使いやすいです。
音質は、モニターイヤホンらしくフラット。1万円台のイヤホンだと低音がスカスカになることもありますが、チューニングのおかげか、その心配は全く要りません。低音もしっかり強調されているからこそ、しっかりフラットになっているんです。
音の粒もとても細かく、小さな音もしっかり聴き取れます。ダイナミック型としては解像度が高い印象です。
定位感もしっかりしています。作業用、ゲーム用、音楽鑑賞用あらゆる用途で使いやすいですよ。
変わったところは特に無いかもしれませんが、だからこそ万人受けするだろうモニターイヤホンに仕上がっています。デザインとカラーも他には無いので、気にいる人はとことん気に入るのではないでしょうか。
SONY MDR-EX800ST
- 駆動方式:ダイナミック型
- ドライバーユニット:16mmドーム型
- タイプ:カナル型
- インピーダンス:16Ω
- 再生周波数帯域:3hz~28kHz
- 重量:7g(コード取り外し時)
MDR-EX800STはカナル型に分類されているものの、少し特殊です。耳の後ろにコードを通すタイプとなっています。少々面倒ではあるものの、一度つければ長時間使っても耳が痛くなりにくいです。カナル型とインナーイヤー型の良いところどりのようなものですね。
音質は、若干低音寄りのフラットです。
ダイナミックのカナル型としては、若干低域が少ないくらいでしょうか。癖がほとんどなく、誰でも使いやすいと感じられるモデルです。特に作業用途にはぴったりではないでしょうか。
低域はローエンドまでしっかり出ます。引き締まっており、過剰な弾力感などはありません。
中域は癖が無く、再現性が非常に高いです。ヴォーカルの作業が若干耳に痛いと感じることがありますが、それ以外は完璧と言って良いでしょう。
高域は情報量では低域・中域に比べて目立ちはしません。派手さはなく、芯の通ったような音です。SONY特有のハイハットの癖があります。粗があるわけではありません。シャリシャリするわけでもないのですが、どことなくクリアとも言い難い音をしています。
SONYのイヤホンによくある機能盛り盛りというのは全くありませんが、それはモニターイヤホンとして切り捨てているのでしょう。モニターイヤホンは音楽鑑賞用と比べるとどうしても高くなりがちなので、機能を盛り込んで価格帯を釣り上げたくはなかったと考えられます。
基本性能がとても高いので、性能一本勝負。質実剛健といったイヤホンです。
SONYの音作りが好きな人、極力癖を抑えた音が良い人には合いますよ。
audio-technica ATH-E70
- 駆動方式:バランスド・アーマチュア型
- タイプ:カナル型
- 再生周波数帯域:20Hz~19kHz
- インピーダンス:39Ω
- 重量:9g
今回紹介しているモデルでは唯一のバランスドアームチュア型です。必然的に、これまで紹介したモデルより高価になっています。それでもギリギリ5万円台といったところです。
音は非常にクリアでフラット。バランスドアームチュア型らしく、しっかり音のバランスが取れています。解像度も高いです。
低音域が強いことも、中高域に偏ることもありません。実にオリジナル音源に忠実な音になっており、モニターイヤホンのお手本のような音です。全ての音域を綺麗に聞くことができるうえに、空気感まで表現されている情報の密度を感じることができます。定位もとても良いですよ。
臨場感が高く音の聞き分けが容易なため、ゲームに使う人も多いです。
本当に味付けがないのでリスニング用途だと、物足りなさを感じる人もいるかもしれません。あくまでも作曲・DTMなどの作業用途、動画・音楽編集、ゲームで音を聞き分けるなど実用品としてクオリティが高いといったところです。
たとえばゲーミングヘッドホンなどによくある低音ブーストが二郎系ラーメンだとすれば、これは昔ながらの中華そばといった印象があります。
中華そばが好き嫌いが分かれにくいのと同じように、この音が苦手だという人はほとんどいないでしょう。
モニターイヤホンとしては、非常に秀逸ですよ。
モニターイヤホンで作業も鑑賞もより良い環境に整えよう!
モニターイヤホンは近年さまざまな用途で人気になってきているとはいえ、まだまだ一般用途で使う人は少ない印象があります。他の人と違うものが使いたいという人にも、ぴったりです。
もちろん、本来の用途である演奏・楽曲制作および編集作業にも使えます。
選び方は若干難しいものの、今回説明したポイントを踏まえていれば自分に合ったモニターイヤホンと出会うことが可能です。
紹介したモデルも参考にしながら、自分に合ったモニターイヤホンを選んで最適な環境を作りましょう!