DAPは5万円以下でも高クオリティなものがたくさんあります。
ただ、メーカーの特徴をより色濃く出しているDAPは、たいてい5万円以上です。10万円前後にまでなると、フラッグシップモデルが選択肢に入ります。そういったモデルは、メーカー独自の機能が全部盛りされていることもあるんです。
しかし、高い買い物になります。
選び方がわからなかったり、どんなDAPが良いのかわからなかったりしたら手が出せませんよね。
そこで今回は、DAPの選び方と、5万円以下のおすすめDAPを徹底的に紹介していきます。
目次
5万円以上のDAPの選び方
5万円以上のDAPともなると、Bluetooth機能やバランス出力には当然のように対応しています。最大サンプリングレートも、ほとんど変わりません。メモリも32GBか64GBがほとんどです。そのため、より各モデルの細かな違いで選ぶことになります。そんな選ぶときのポイントを、紹介しましょう。
連続再生可能時間
連続再生可能時間およびバッテリー容量は重要です。DAPは持ち歩いて音楽を楽しむものなので、バッテリー容量は大きければ大きいほど良いでしょう。
ただ、5万円以下のDAPよりも高出力なものが多いため、バッテリー容量は大きくても連続再生可能時間は5万円以下のDAPより短いことが多いです。
相場は、5万円から9万円程度で4000mAh。時間はアンバランス出力で10時間くらいのモデルが多い傾向があります。
よしぞー
バランス出力は簡単に言えば、ノイズがほとんど出ない出力形式のことだよ
一般的なイヤホンは、アンバランスよね
あや
10万円前後になると6000mAhという容量のモデルも出てきます。
重量・大きさ
5万円以上のDAPには、超小型モデルはあまりありません。機能をたくさん詰め込んで、DACチップをデュアル搭載したり内部構造を強化するとなると、どうしてもそこそこの大きさが必要になるためです。
それでも、持ち運びやすい大きさに留める努力を各メーカーがしています。その中でも自分の用途に合う・合わないという違いはあるので、しっかりチェックしましょう。特に厚みは、ポケットに入るかどうかを左右する要素なので見ておくと良いですよ。
同様に、重量もしっかり見ておきましょう。
ヘッドホンアンプ部の品質
DAPはヘッドホンやイヤホンを使うことが前提のオーディオ機器です。そのため、ヘッドホンアンプ部分の品質も重要な要素になります。電気抵抗値を表している「インピーダンス」を見ることが大事なのですが、ここは難しい電気系の話になってくるんですよね。
これはイヤホン/ヘッドホンとの相性に関わってきます。
とりあえず、DAPのΩ値とイヤホン/ヘッドホンのΩ値が近いのが良いということだけ覚えておけば問題ありません。
ゲイン切り替えの有無
先程ヘッドホンとの相性について語りましたが、インピーダンス等がわからない場合はゲイン切り替えの有無だけでも見ておくことをおすすめします。
ゲインの切り替えができれば、どんなイヤホン/ヘッドホンでも合わせやすくなるんです。手持ちのイヤホン/ヘッドホンで相性が微妙だと感じたときは、ゲインを切り替えれば手持ちの物と最適化することができますよ。
USB DAC機能など特殊な機能の有無
DAPには、さまざまな機能が搭載されています。
よく搭載されるのは、USB-DAC機能です。これはUSBでPCなどに接続することによって、DACとしても使える機能のこと。
よしぞー
DACはデジタルの音声データを、再生できるようアナログに変換する部分だね
DACの性能が良いとどうなるの?
あや
よしぞー
変換時の劣化を抑えられたり、より良い音になったりするんだ
他にも、5万円以上のDAPともなるとさまざまな機能があります。機能はメーカーによって異なりますが、たとえば次のようなものです。
- 音質改善機能
- アナログエフェクト機能
- LINK機能
自分に合った機能を搭載するDAPを選ぶと、より幸せになれますよ。
5万円以上のおすすめDAP5選
DAPの選び方について説明してきました。ここで、実際の5万円以上のDAPを5つ紹介します。実際のモデルをチェックしながら、自分にはどのようなDAPが合うのかどうか考えてみましょう。
Cayin N3Pro
- 連続再生可能時間:最長11時間
- バランス接続時:9時間
- 幅63.5×高さ115.2×厚み18.9mm
- 重量:195g
- OS:Cyin OS
- 4.4mmバランス・3.5mmシングルエンドフォーンアウト
- 3.5mmシングルエンドラインアウト
- ウェイUSBオーディオ(DAC・トランスポート)S/PDIF出力(Type-C経由)
- 4.4mmバランスラインアウト
- Bluetooth5.0
- Wifi接続に対応
この価格帯では標準的な仕様より少し上、といったところでしょうか。
対応インターフェースの幅が広いのが良いですね。
シングルエンドフォーンアウトでは3段階のゲイン調整ができます。シングルエンドラインアウトは、出力レベルを2.0/1.5/1.0Vから選択可能です。
バランスラインアウトでも、4.0/3.0/2.0Vから出力レベルを選べます。
ストリーミングにも対応。
スマホと接続して音量調整やライブラリ管理、検索、再生操作、プレイリスト操作ができる機能も搭載しています。専用アプリが必要になるものの、地味にありがたいですよね。ポケットに入れるには少し厳しい厚みではあるので、カバンにN3Proを入れたままポケットに入れているスマホで操作ができます。
Wifi接続によってファームウェアアップデートにも対応。
さらに、再生中の曲のサンプリングレートをLEDで表示してくれる機能もあります。
- 赤は高圧縮データ
- 黄色:44.1kHz/48kHz
- 緑色:88.2kHz/96kHz
- 青色:352.8kHz/384kHz/705.6kHz/768kHz
- 紫色:DSD64/DSD128/DSD256/DSD512
- 白色:DSD64/DSD128/DSD256
- 充電中は赤色に点滅
ちょっと覚えるのはしんどそうだけど…
あや
よしぞー
普段は気にする必要がなく音源の質を気にしたい時にチェックすればよいおまけ的な機能として考えればよいよ!
基本操作はタッチパネルで、ボリューム調整はノブ式です。
最大の特徴は、真空管モードとソリッドステートモード。
真空管モードは、真空管を通して音楽を再生してくれます。真空管は一般的なアンプと比べると、あたたかみがあり柔らかい滑らかな音を鳴らしてくれる特徴があるんです。
さらに、真空管再生時には2つのモードから選べます。
まず、トライオードモードです。
ボーカルがかなり前に来て、近くなった感じがします。楽器隊はボーカルと少し距離を置き、後方で鳴っているようなイメージです。ボーカルが聴きやすくなっているので、現代音楽との相性が良いですよ。音の消え際にもしっかりとした余韻が感じられます。
続いて、ウルトラリニアモードです。これは抑揚がかなり強く、音の強弱がしっかりと表現されています。メリハリがしっかりしており、濃いめの味付けの音を好む人にぴったりです。
ソリッドステートモードは真空管を通さず、音を鳴らします。
こちらは音の粒がかなり細い印象があるんです。解像度が高いものの角はあまり感じられず、柔らかいのにデジタル感がしっかりあります。レコーディングスタジオにいるかのような再現性の高さが魅力です。
SHANLING M6 Ver.21
- 連続再生可能時間:最大11時間
- バランス接続時:8時間
- バッテリー容量:4000mAh
- サイズ:幅71x高さ133.5x厚み17.5 mm
- 重量:233g
- H/M/Lの三段階でゲイン調整可能
- OS:Android7.1
- Bluetooth4.2
- 「ES9038Q2M」DACチップデュアル搭載
- 低ノイズLDOレギュレータ採用
- 最大768kHz/32bitまでのPCM
- 最大22.4MHzまでのDSDネイティブ再生
- バランス出力2.5mm、4.4mm(570mw(32Ω負荷時))
M6 Ver.21は、その名前にもあるとおり「M6」というモデルのアップグレード版です。M6は「全部入りDAP」と通称され、高機能DAPとして人気でした。そんな全部入り感は残したまま、内部機構などをグレードアップしたのがM6 Ver.21です。
デザインはとても洗練されています。背面にはSHANLINGのロゴ、Hi-ResとHi-Res Wirelessのシールがあるだけです。取り立てて変わったデザインというわけではなく、シックで高級感があります。
ベースモデルからの最も大きな変更点は、DACチップにあるんです。
フラッグシップ級のスペックを持つ「ES9038Q2M」を2基搭載しています。リップにはASRC機能が内蔵されており、これによりクロックのジッターを大幅に除去しているんです。さらにTHD補正機能によって局所的な歪を低減しています。低ノイズ、低歪を実現しているというイメージですね。
より素直な音になりそう!
あや
そのうえ、低ノイズLDOレギュレータを採用しています。これは、過渡電圧や電源ノイズなどから保護してくれるものです。無音をしっかり感じられる、ノイズの無いクリアな音の背景を楽しめます。
さらに、アンプ回路のLPF部には「OPA2211」オペアンプを2つ、ELNA社製オーディオコンデンサ、誤差0.1%の薄膜抵抗器を脚用しているんです。
よしぞー
簡単に言えば、徹底的にノイズと歪みを排除してるということだね
ゲイン調整はL/M/Hの三段階で可能です。
音の印象は、濃密。音の強弱がハッキリと描写されています。余韻もしっかり感じられ、濃厚で楽しい音楽体験ができますよ。
特に中低域の重めの感覚が非常に聴きごたえがあり、幅広いジャンルでその実力を感じられます。
残念なところがあるとすれば、最新機種なのにOSが若干古いことですね。
SHANLING M6 PRO Ver.21
- 最大連続再生時間:シングルエンド・シングルDACで16時間
- バランス出力時:13時間
- バッテリー容量:4000mAh
- サイズ:幅133.5×高さ71×厚み17.5mm
- 重量:244g
- DACチップ:ES9068AS x2
- CPAF採用
- OPA2211
基本的な部分は、M6 Ver.21とそんなには変わりません。
主な違いは、DACチップ等です。DACチップはES9068ASを2基搭載しています。これは、MQA音源をネイティブ再生に対応できるよう設計されているもので、最高品質でMQAを楽しめるというものです。MQAは最近結構使われだしているので、これはありがたいですね。MQA-CDを取り込んで使う人には、ぴったりです。
さらに、CPAFを採用しています。これは4chフルバランスアンプ回路に搭載されるもので、高い音質と強力な出力レベルを実現するものです。
OPA2211も音質を保ちながら高出力にするものとなっています。クリアな音質を維持しながら出力を高めてくれるので、より高音質で迫力のある音を楽しむことが可能です。
音に関しては、傾向はM6 Ver.21とほとんど変わりません。純粋に音をより良くして出力を高めたといった具合です。そのため、人によってはほとんど違いを感じられない可能性があります。
Proというネーミングにもある通り、よりマニア向けのM6といったところでしょうか。
SONY Walkman NW-ZX507
- 最大連続再生時間:20時間
- バランス接続でDSDをネイティブ再生時:約9時間。
- 満充電まで約6.5時間
- Type-Cで他のデバイスと接続可能
- 幅57.9×高さ122.6×厚み14.8 mm
- 重量:164g
- 容量:64GB
- OS:Android9.0
- Bluetooth5.0
- Bluetoothコーデック:SBC/AAC/aptX/aptX HD/LDAC
- ストリーミングサービス対応
- SーMaster HX採用
- DSEE Ultimate搭載
- DCフェーズリニアライザー搭載
- バイナルプロセッサー搭載
特徴的な機能をじっくり見ていきましょう。
まずは、S-Master HXです。
DSDネイティブ再生および最大384kHz/32bitまでのWAV再生に、この機能が対応しています。
アンバランス出力時は50mW+50mW(16Ω)の実用最大出力を実現しているのが、この機能の特徴です。
バランス出力時には、200mW+200mW(16Ω)の実用最大出力を実現しています。
さらに、DSD信号を極力加工せずにPCM出力のまま、DSD信号をネイティブ再生してくれるんです。
よしぞー
音質劣化がより少なく、音が変わらないということだね
次に、DSEE Ultimateです。
これはAI技術を使って、自動的に音質をハイレゾ級にアップスケーリングする機能のこと。リアルタイムで曲のジャンル等を分析してくれるので、各楽曲で最適な調整をしつつアップスケーリングしてくれます。
最大192kHz/32bitにまで拡張してくれるので、実質何でもハイレゾ級にできる機能ということですね。
続いて、DCフェーズリニアライザーです。これは、簡単に言えばアナログアンプの音を再現してくれるエフェクト機能のこと。
バイナルプロセッサーは、アナログレコードの豊かな音を再現するエフェクト機能です。これら2つのエフェクト機能が非常にクオリティが高く、より豊かな音を楽しむのに一役買ってくれます。
音の傾向は、フラット。
低減の沈み込みの制動と、音の輪郭がハッキリしっかりとしているので、安定感があります。中域はボーカルが少し近いように感じられるものの、近すぎることはありません。BGMもしっかり聞こえるくらいです。スマホのスピーカーはBGMのほうが聞こえやすいものが多いので、スマホとの違いはわかりやすいでしょう。
高音は綺羅びやかによく伸びるといった印象がありますが、角はないので疲れません。
前述のエフェクト機能などと合わせれば、よりクリアで豊かな音を楽しめるのが良いところです。
よしぞー
音に関しては、最高というレビューばかりだね
Walkmanの安定感も魅力よね
あや
FiiO M11 Plus LTD Aluminum Alloy
- 最大連続再生可能時間:約11.5時間(アンバランス)
- バランス出力時:約10時間
- バッテリー容量:6000mAh
- 対応サンプリングレート:384kHz/32bit DSD256/1bit
- DACチップ:AK4497EQ×2
- アンプ回路:THX AAA-78×2
- OS:FiiOカスタム仕様のAndroid10
- 重量:310g
- 幅75.7x高さ136.6x厚み17.6 mm
- L/M/Hの三段階のゲイン調整が可能
- ボタン+タッチパネル複合型のボリューム調整機構
- All to DSD変換機能
このモデルは、限定販売モデルです。ボディがアルミでできているのが特徴的。見た目、質感の高級感があり、所有欲が満たされます。
アンバランス出力時とバランス出力時とで、バッテリー持ちがほとんど変わらないのがありがたいですね。他のモデルを見ればわかりますが、普通はもっと開きがあるものです。バッテリー容量も6000mAhと大容量。
背面は、ダイヤモンドカットのテクスチャがあしらわれているんです。光の屈折で、角度を変える度に見え方が変わるのが面白いところ。
美しくて眺めているだけでホッコリするね
あや
DACチップは新世代フラッグシップ高性能DACチップで、これをデュアル搭載しています。これにより、ノイズ耐性が上がり繊細なおとの表現ができるのが特徴です。
アンプ回路はTHX AAA-78で、これもデュアル搭載されています。
音の消え際の表現が秀逸で、音のディテールまで忠実に復元してくれるのが特徴です。まるでレコーディングスタジオにいるかのような、臨場感のある再現性の高い音が楽しめますよ。
さらに低ノイズ、低歪にもなります。
機能面では、ALL to DSD変換機能が特徴的です。これは第3世代目の機能となっています。前世代と比べると、消費電力が30%削減されているんです。さらに、不要な高調波を減らし、ピュアかつクリアな音を実現しています。
この機能を使えば、PCM信号がDSDに変換されてから、アナログ信号に変換されるんです。
PCMとは質感が違う、自然でクリアな音になります。
よしぞー
言ってしまえば、何でもDSDで聴けるという機能だね
SONYのバイナルプロセッサーと似てるかも
あや
音の傾向は、フラットです。
全体的に透明感がある音に仕上がっています。中高域が特にクリアで、女性ボーカルとの相性が抜群に良いです。宇多田ヒカルの曲なんかは、最高の相性なのではないでしょうか。
低音は柔らかく丸みを帯びた、落ち着いた味付けになっています。
フラットな音のバランスが好きな人は、気にいる可能性が高いです。ゲイン調整でいろんなイヤホン/ヘッドホンと最適化できるのも良いですね。
バランス出力時には、一つ一つの音により厚みが増します。ノイズもより低減されており、クリアな音をさらに実感しやすくなりますよ。
2021年9月現時点で、各ショップの在庫がほとんどないので見かけたときが買い時です。
お気に入りのDAPで高音質を持ち歩こう!
5万円以上のDAPと言えども、スペックや機能はそれぞれ異なります。最大サンプリングレートなどほとんどのモデルで変わらない部分もあるものの、音の傾向・機能面は大きく異るので、しっかり選ばないといけません。
今回説明した選ぶ際のポイントをチェックしつつ、各モデルのレビューなども見て、できれば実店舗で体験してからどれを購入するか選ぶと良いでしょう。