メタバースとVRはよく、同列で語られています。
ただ、本来メタバースとVRとは異なるものです。
メタバースはVRゲームの一種であり、また、VRもメタバースの楽しみ方の一種というのがより正確な認識だと言えます。
そこでメタバースとVRとの具体的な違いはどこにあるのか、VRを用いたメタバースの具体例や必要なVR機器などについて説明しましょう。
目次
そもそもVRって何? ARとの違いやメタバースについても紹介
まず、そもそもVRとは何なのかについて説明します。語感が似ているARとの違い、そしてメタバースについても紹介しましょう。技術的な部分は噛み砕いて簡単に説明しますので、参考にしていただけると幸いです。
VRは視界いっぱいに映像を投影する技術
VRは、難しいことを抜きにして言えば、視界いっぱいに映像を投影する技術みたいなものです。
VRはVirtual Realityの略ですが、これは限りなく実体験に近い体験ができる技術ということを意味しています。仮想現実と訳されることが多いですが、これはあまり正確ではありません。
ゴーグルを装着することにより、視界の360度が覆われます。そのままではただの目隠しですが、そこに映像を投影することであたかも別の場所に移動したかのような感覚が得られるんです。
さらに、首を動かせば映像も同期して動くという「トラッキング」技術も盛り込んでいます。
一般的には、首を回す動きをトラッキングするところまでできてはじめて、VRと呼ぶんです。
映像が目の前に広がるだけで、首の動きに合わせて動かないとただの映像ってことね
あや
よしぞー
より本格的なVR機器になると、手の動きや足の動きなんかもトラッキングするようになるよ
続いて、仕組みについても少し触れておきましょう。
現在のVR機器のほとんどは、ヘッドセットというゴーグル型です。これをかけて顔の向きに合わせ、映像を表示します。
目の前の映像は平面ではなく立体的に見えるのですが、これにも仕組みがあるんです。ディスプレイの液晶を右目と左目に区切り、映像を分けることによって立体的に見えるようになっています。
人間の目は、実は左右で見えるものが微妙に違うんです。両眼視差と呼びます。普段は左目で見ているものと右目で見ているものを脳で繋ぎ合わせ、立体的に見えるようにしているんです。
つまり、VRはこの両眼視差を人工的に再現して立体視を表現しているということになります。
ARは現実世界に映像などを投影する技術
ARは、簡単に言えば現実世界に映像や画像などを投影する技術のことです。
ARはAugmented Realityの略で、日本語では拡張現実と訳されます。現実の風景にバーチャルの情報を重ねることで、現実世界を拡張するというのが言葉のイメージです。
VRよりも比較的早くに普及して、さまざまなところで使われるようになりました。
たとえば、ポケモンGOもARを使ったサービスのひとつです。ポケモンGOはスマホ越しに現実の風景を映しながら、そこにポケモンの3Dモデルを重ねています。
現実世界にポケモンがいるかのような没入感が得られると同時に、ポケモンによって拡張された現実世界を写真におさめることもできる画期的なゲームです。
ポケモンGOの前にも、たとえば3DSにARマーカーを埋め込んだカードにカメラをかざすことでキャラクターが出てくる遊びが取り入れていました。
他にも、観光地にARマーカーが用意されて歴史上の人物あるいはそれをイメージしたイラストと写真撮影ができたりするケースが、近年増えてきています。
VRとの違いは、ここまで説明すれば明白ですよね。
よしぞー
VRは仮想の空間で現実のような体験ができる技術、ARは現実で仮想的体験ができる技術ってことだね
似ているようで、実は逆のことを目指してるのね
あや
メタバースは必ずしもVRである必要はない
最後にメタバースについてですが、メタバースは必ずしもVRである必要はありません。
混同して語られがちなのは、2022年1月現在稼働しているメタバースのプラットフォームのほとんどがVRをメインに据えているためです。VR機器がないと利用できないプラットフォームも結構ありますから。
メタバースというのは、あくまでも仮想世界でアバターを用いて現実世界のような体験ができることを指す言葉です。
仮想世界はVRを含め、Nintendo Switchのようなゲーム機で遊べるゲームも含まれます。
VRとメタバースの違いとよくある勘違い
VRについて詳しく説明してきました。メタバースについても少し触れましたが、実際にVRとメタバースとはよく勘違いされることがあります。そこで、VRとメタバースの違いと、それにまつわるよくある勘違いについて紹介しましょう。
VRにはメタバースではないゲーム・アプリもたくさんある
VRには、メタバースじゃないゲームやアプリもたくさんあります。
VRのアプリと言えばVRChatやHorizonなどのメタバース系アプリばかりが注目されるのですが、VR機器が一気に流行った2018年あたりには普通のゲームの注目度がVRChatと同等程度には高かったんです。
たとえば、「Beat Saber」というリズムゲームがあります。
これはVR空間でライトセイバーのような光る棒で、流れてくるノーツを斬るという体感型のゲームです。
他にも、時間停止能力を駆使して戦うSUPERHOTというシューティングゲームもあります。
ゲーム以外にもデスクトップ画面を表示して仮想デスクを作れるアプリや、映画館のような背景でNetflixなどを楽しめるアプリなどが人気です。
メタバースはVRで楽しめるコンテンツの一種に過ぎない、と冒頭で語った理由がそれらにあります。
スマホやPCだけで楽しめるメタバースもある
冒頭では、VRはメタバースの楽しみ方の一種でしかないとも語りましたね。
現在稼働しているメタバースのプラットフォームの多くはVRですが、全てではありません。
VRとデスクトップ両方に対応しているものもあれば、VRとスマホ両方似対応しているものもあります。たとえばVRChatは初期からデスクトップに対応していますし、Clusterなんかもスマホから楽しめることを売りにしているんです。
メタバースは仮想異空間上で現実世界と似たような体験ができるところに価値があるので、それを楽しむためのデバイスは何でも良いんですよ。
メタバースの本質は他者との交流や現実との交わりにある
メタバースの本質はVRの没入感にあるわけではなく、他者との交流や現実との交わりにあります。
メタバースでは、仮想空間内にアバターを用いてアクセスし、同時にアクセスしている世界中のユーザーとリアルタイムで交流できるのが深い醍醐味です。アバターを通しているため、ただチャットするよりも「その人が目に前にいる」という感覚が強くなります。
そのため、従来のネットコミュニケーションより現実に近い自然なコミュニケーションが取れるということで、メタバースは注目されているんです。
さらに、現実との交わりという醍醐味もあります。
たとえば、現実世界のような経済圏ができているケースもあるんです。メタバース内で使えるアイテムなどを作り、それをメタバース内に展示して販売するというのがメタバース流行より前から行われてきました。
昨今はその流れがより強くなっているため、注目されています。
他にも現実世界と同期している部分があり、そこがメタバースの本質の一つとなっているんです。
この本質さえ知れば、VRとメタバースとは異なるものだということは明らかですよね。
また、メタバースとVRのそれぞれの楽しみ方も見えてくるのではないでしょうか。
VRを用いたメタバースの具体例について
VRとメタバースとは切り離して考える必要があると言っても、メタバースの交流の醍醐味や現実との交わりという没入感がより高いのはVRでアクセスする場合です。VRはメタバースの楽しみ方として最上位だと言えるかもしれません。そこで、VRを用いたメタバースの具体例について、それぞれ簡単に紹介します。
VRChat
VRChatは、2017年にリリースされてじわじわと盛り上がり、2018年には爆発的にユーザーが伸びたソーシャルVRアプリです。
自分の作ったアバター、またはBOOTHなどで売られているアバターを用いてアクセスできます。ゲーム内のコンテンツも、ユーザーが直接手を加えられるのが大きな魅力です。ワールドを自分で作成したり、ワールドで簡単なミニゲームを作ったりすることもできます。
さらに、VRコミケとも称されることのあるバーチャルマーケットなど、企業が主催・参加するイベントも多いです。
バーチャルマーケットは多種多様な展示ブース、レクリエーションが楽しめます。アバター、またはアバターのアイテムに関する出典が多く、クリエイターや企業が多数参加しているんです。
他にも、ユーザーが日常的に細々としたイベントを開催しています。
それらに自由に参加できるところも、VRChatの魅力です。
NeosVR
NeosVRは、VRChatよりももっと「みんなで世界を作っている」という感覚が強いメタバースです。
2014年にチェコのSolirax社が開発した、アバターを用いて世界中の人とコミュニケーションが取れるソーシャルVRアプリとなっています。
特徴的なのは、VR空間内で直接ワールド作成が可能なことです。VRChatなどメタバースの多くは、モデリングデータを3Dソフトで作って、Unityを使ってアップするというプラットフォーム外での作業が必要になります。
プラットフォーム内で作業できるメタバースも他にありますが、一人で地道にコツコツと…というのが多いです。
一方NeosVRは、みんなでメタバース内に集まってワイワイ作業できます。会議をして実際に作ってみて、スクラップ&ビルドを繰り返しながら完成に近づけている共同作業をVR内で楽しめるということから、ものづくりが好きな人に人気です。
Cluster
Clusterは、「引きこもりを加速する」という面白いコンセプトを掲げてサービスが開始されたメタバースです。
VRだけでなく、PC単独、スマホでも気軽にアクセスできるところに大きな魅力があります。特にスマホに対応しているメタバースは現状数が少ないので、貴重です。
感覚としてはVRChatに近く、さまざまな見た目のアバターを作って楽しむことができます。ワールドも個性的で、どのワールドにも自由に遊びに行くことが可能です。現実世界の街を再現したものから、異世界風なものまでさまざま。
中にはお化け屋敷や謎解きゲーム、アスレチックなどが用意されているワールドもあります。
ときにはイベントや音楽ライブが開かれることもあり、盛り上がっているメタバースです。
VRをはじめるならどんな機材が必要?
VRとメタバースを楽しみたいのなら、VR機材が必要になります。VR機材にも色々な種類があり、メタバースを楽しむなら選択肢は実質二種類のみです。とりあえずVRの映像コンテンツが楽しみたいなら、選択肢は三種類になります。そんなVR機材についても、簡単に紹介しましょう。
PC接続型VRゴーグル
PC接続型のVRゴーグルは、読んで字の如く、PCに接続して使用します。単体ではVR機能のあるゴーグルというだけなので、性能はある程度PCに依存するのが特徴です。たとえばPCにのグラフィック性能が低いと、VR機器が出せる画質を引き出せません。
そもそもVRゲームのほとんどは高いグラフィック性能を必要としますし、メモリも食います。
そのため、このタイプのVRゴーグルを使うならそれなりに性能の良いゲーミングPCが必要です。
さらにVRゴーグルの中でも特に高価なものが多いので、ゲーミングPCがあってもなくてもコストはかなりかかります。
PCまで買うとなると…どれくらいかかりそう?
あや
よしぞー
んー…妥協なしで30万前後、妥協しても20万前後かな
ただ、コストがかかる分高性能ですしトラッキングなどの拡張性も高いので、本格的にVRとメタバースを楽しみたいならメリットも大きいです。
一体型VRゴーグル
現状メタバースを楽しんでいる人に最も普及しているのが、オールインワンタイプのVRゴーグルです。
ゴーグル自体にコンピューターが搭載されており、PCに繋がなくても様々なコンテンツを楽しむことができます。VR専門のゲーム機のようなものだと考えると、わかりやすいかもしれませんね。
PC不要なのでコストを抑えられるうえ、使い方も簡単なのがメリットです。
予算はどれくらい?
あや
よしぞー
安くて3万、高くても5万あれば十分
PS5を買うくらいの予算感覚で買えるのが、良いところですね。
性能も普通にVRコンテンツを楽しむのに十分で、VRChatなどのメタバースも十分楽しめるのでおすすめです。
ただ、トラッキングセンサーを増やすなどの拡張性に乏しい、バッテリー持続時間が短い製品が多いなどのデメリットがあります。
特に売れているOculusQuest2も、映画を一本見たらバッテリーがギリギリになる程度の持続時間です。
スマホ型VRゴーグル
スマホ型VRゴーグルは、スマホでVR映像コンテンツを見るための装置です。スマホをセットすることにより、スマホの液晶を左右に分割していい感じにVRにしてくれます。
単純な仕組みでありディスプレイを搭載しなくても良いなどの理由からか、コストが低いです。安いものだと3000円から4000円程度あれば買えます。高くても1万円から2万円程度なので、導入コストは圧倒的に低いです。
デメリットは、用途が映像コンテンツに絞られてしまうこと。
VRの大人なビデオなどを楽しみたい人、YoutubeなどにあるVR動画を見てVRの感覚を掴みたい人にはおすすめです。
そう考えると、安いもので十分そうね
あや
よしぞー
これでVRに慣れたり3D酔いの度合いを確かめたりしてから、他のタイプに移行するのがおすすめ!
メタバースとVRを始めるなら今! 仮想の世界を楽しもう
メタバースとVRは、お互いに楽しみを増やしてくれる良い関係にあります。
メタバースはPC単体やスマホでも楽しめますが、VRによる没入感はとても魅力的です。メタバース普及のためにはスマホ対応のものが増える必要があるでしょうが、それとは別にVRで楽しむという魅力は今後もどんどん研ぎ澄まされていくでしょう。
また、メタバース以外にもVRには楽しいコンテンツがたくさんあります。
この機会にVRとメタバースの両方をはじめてみるのも、人生により彩りが出るかもしれませんよ。